【小説】夢のままにぼくは君に恋をする。②夢であれ

前回の話し 

第1話 プロローグ

②夢であれ



僕は休日を迎えていた。

【何かあること】って素晴らしい。

ぼくは生まれて初めて仕事に感謝した。

はじめの2,3日は作業にあまり身がはいっていなかったが、

早く彼女のことを忘れたくて、

仕事に身が入りだしたのだ。

不思議と作業中は、

失恋の悲しみを
忘れさせてくれた。

むしろ辛いのは、
何も考えることがない日。

あれほど、

華金や、土曜日なんて最高だ!とおもっていたのに

今となっては、休日が地獄。

ボーっとしていると、

ふと彼女のことを思い出す。

ボーっとしている時間が

こんなに残酷だなんて。

結婚することを

考えていた

先週まゆみに電話でフラれた。

部屋を見渡すと、

この家にも彼女との温かみを思い出させる『残骸』がある。
いや、まだ『大切な想い出』と呼ぶべきか。

こんなに彼女との想い出を彷彿させる

それらは、
まちがいなくぼくの心を支える

かけがえのないものだった。


PC内には
まゆみとの、
2ショットのバックアップや
ぼくがふざけて作った、
好きな音楽を挿入した二人だけのショートムービー。


旅行先でろくろを使って
一緒に作ったコップや、

逆にまゆみがぼくの誕生日に作ってくれた

スナップショットのアルバム集や写真立て。


長く付き合っていた分、

やはり

これらをガラクタ呼ばわりするには
まだ割り切れない。


休みの日がこんなに退屈だなんて。

ダラダラ彼女とLINE出来たことが

すごく幸せだったことに気づく。

そういやなんかのTVドラマで
誰かがいってたな。

「幸せって、手を叩けることなんじゃないかな」

幸せなら手をたたこう!パンパン!

っていう

あの歌謡曲。

ぼくは、
小さく胸の前で手をたたいた。

ありきたりな日々が

これほど幸せだったなんて。

失ってから気付く。

失ったものばかりに

目を向けるのじゃなくて、

今自分に何が残されているか?

何ができるか?

そんな視点で物事を考える。

むかし、
まゆみと
流行りのタピオカミルクティー屋に並んでいると、

列を勘違いしたカップルに割り込まれ、
注意せずに

「早く家買って、ウンコでもしたかったんやろう」

「きたないよー」

そんな風に二人でなじったのを思い出した。

割り込んだのが意図的でないにしろ、
あんなことを笑いにかえてしまえる力が僕らには合った。
なにごともない出来事も

まゆみといればそれだけで楽しかった。

少なからず、まゆみと一緒に過ごした日々

という事実においては、

なによりも
幸せだったということ。

だから、
彼女が
憎いなんて考えたこともなかった。



パンパン。

僕は立ち上がり、意を決して、



部屋を掃除することにした。





まゆみとの

かけがえのない遺産

すべてを捨てること。

ぼくと彼女だけの告別式とでも名付けようか。







「あー、疲れた。」

この世で

最も時間がかかるもの
ランキングと言えば、


渋滞と
皮膚科の初健診と
想い出の品の整理整頓


なんじゃないかな。

昼過ぎから始めた

“彼女との告別式”

日が沈みかかった頃にようやく終えた。


まゆみとの遺品たちを

ゴミ袋に捨てることにした。

「燃えるゴミの日にまとめて捨てよう。」

手紙は、

捨てるに捨てきれなかったから、

写真をとって保管し、

現物は捨てることにした。

いつか

この写真たちが、

僕の心を支える
かけがえのないものじゃなくなる日まで

データとして保管してもいいことにした。


身体を意欲的に動かしたから、


すごく疲れた。


簡易的にご飯を済ませ、
お風呂に入って、

寝る準備をする。


フラれてから、

意識してみていなかったSNSを久しぶりに眺めていた。


SNS インスタ スマホ インスタグラム ツイッター フェイスブック

ぼくの告別式は

まだ終わっていないこと


に気づく。

SNSでも彼女と繋がっていたからだ。
ツイッターやインスタグラム。


大学時代の頃から繋がっていたんだ。

昔の自分が投降した写真を見ていた。

色んなことがあった。

日常の何気ない写真から、彼女との写真



その写真のそれぞれは、
サークル仲間に見てくれと言わんばかりの、

いわゆるリア充アピールという写真にあふれていた。

みんなに

それをネタにしゃべるのがとても楽しかったし気持ちよかったあの頃。

なにもかも受け入れられているような気がして。。。

彼女が喜ぶことは何でもした。

もちろんサプライズだとか。

いまおもえば、

独りよがり、または自己満足だったのかもしれない。


サークル仲間の誰かに認められたいだとか、
イイねやリツイートがたくさんほしいとか。

そんなくだらないもののために、

必死になって。

だから彼女の心がだんだん離れていくのにも
気付けないでいたんだ。

あほみたいに

結婚式場のカタログを眺めてたり。


ここにもまゆみとの遺品が数えきれないものがある。

データだから、消さないでいいことにしよう。

フォロー欄に

彼女のなまえがあることを

ふと確認した。

「よかった・・まだフォローされている。」

ってなにをよろこんでいるんだ。

ぼくはふられたんだ。

まだ繋がっているのが

たとえSNS上でも今はうれしいような

もどかしいような・・・。


インスタグラムのストーリーを眺めていた。

ドクン。

ドクンドックン。


心臓が、たかなっているのが聞こえた。



緊張しているのがよくわかる。

ゴクリ。

唾を飲みこみ、

もういちど彼女のストーリーを眺める。


男に肩を抱かれ

まぶしい笑顔を魅せる彼女が写っていた。

一緒に映っている男の

その男をタップすると、

ご丁寧にその男のアカウントのページに移動した。




ぼくは

ソイツのことをよく知っていた。

ぼくのなかで

「浮気されていた・・・」

という思いがよぎる。


大学時代の友人だった。

ぼくもソイツをフォローしていた。


浮気されていたという疑惑は確信になった。

ソイツのストーリーには、



「初デート 海浜公園」

なんて

デコレーションされた文字が

きらびやかに画面におどっていた。

ドクン。。

バクバク・・・

知らないほうが幸せ。

なんて無理だろう。。

自慢祭り

毎日のように

このSNS上で繰り広げられるのだから。



寝付けなかった。

ぼくは急いで

彼女との

遺品とは

もう呼べなくなった

ガラクタ

明日は燃えるゴミの日なのかも

そんなことも考えずに、

アパートのゴミ捨て場に放り投げた。



そして、

二度とイイねを押してやるもんかと。

感情任せに

まゆみとソイツをフォローから外した。

「今日は疲れた・・・」

今日は、手を叩けそうにないや。



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