【小説】夢のままにぼくは君に恋をする。第1話プロローグ

①プロローグ

気付けば

声をあげて泣いていた。

外は雨が振りしきっている。

こんなとき

粋な小説家や詩人たちは

「空も泣いている」

なんて表現をするんだろうな。

真っ暗な部屋をみわたすと

部屋中に使用済みのティッシュであふれかえっている

どれくらい、そうしていただろうか。

鼻をふいてもふいても馬鹿の一つ覚えのように
鼻水がとまらない。

それは、
おぼえたての言葉を
なんどもなんども口にする子どものごとし。


こんなみっともない自分を
慰めてくれる人もいない。

嗚咽がおさまり、
ひとしきり泣いたあと、

「あー、スッキリした。」と

とりあえず口にだしてみた。

全然スッキリしないのだけれども。

今日の出来事を思い返すと生きた心地がしない。

大学生時代にサークルで知り合った、まゆみと付き合ってから3年

結婚も考えていた。

そんな彼女に26歳にして

フラれたのである。

彼女にはトコトン尽くしてきた。

一緒にいて心地よさしかない彼女だった。

そんな彼女とだから3年も
付き合えたとおもっている。

3か月後に控える
彼女の誕生日にはプロポーズも考えていた。

ぼくは、鼻水まみれのティッシュと

結婚式場が載っているカタログを一緒に捨てた。


これからどうしようか。

「いいや、今日は何も考えたくない。」

布団にもぐりこみ明日の仕事に備えることにした

こんなときでも

明日の仕事のことを考えている

サラリーマン脳に嫌気がさした。








朝日

「嫌なことがあっても、太陽は昇ってくる。」

夜を迎えると、
朝は必ずやってくる。

「まぶしい。」

カーテンをあけながら、

失恋休暇なんてないのかな・・・

なんて都合のいいことばかり考えながら、
支度をすませ、行きたくない職場へ向かう。

仕事中は、不思議と作業に没頭しているからか

哀しみに浸れる余裕なんてなかった。

朝礼が終わったと思うと、

気付けばお昼休みの時間のチャイムが鳴る。

ランチ 昼食

昼食中に、
会社で3年先輩のケンジ先輩に

3年つきあって結婚を考えていた彼女に昨日フラれた出来事を話した。

「ハハハ、散々な休日やってんなぁ。
 でも、お前なら新しい彼女みつかるよ。
 今度、合コンすることあったら声かけるよ」

「はい、ありがとうございます。・・・」

まだ気持ちの整理がつかず、正直合コンに行くなんて。

そんな気持ちにはなれなかったが、

笑い飛ばしてくれる方がまだ気持ちが楽になる。

「せやけど、お前ヨリ戻そうとか思わんかったん?
 結婚したいって思える人やったんやろ?
 まゆみちゃんの誕生日には、ただの誕生日会にならへんとをほのめかしたんか?」

「いや、一方的に電話でフラれたのと、
 そんなことを伝えるとすがってるみたいでダサいかなと思って。」

「そうか。今は辛いやろうけど、
 モヤがかかった気持ちは、
 時間が解決してくれる。
 相手のこと憎いか?」

「憎い?・・・。
 フラれた時は、驚きしかなかったです。
 電話を切って、ボーっとしてると涙がわいてきました。」

そう。


突如やってきた、

夕立のような涙は、

僕史上によると、


“観測史上 初記録の大雨のごとし”


ケンジ先輩には、
声をあげて泣いたことは黙っておこう。

しかしフラれたけど、
憎いとは思わなかったな・・・


一方的にフラれたのに。



しいて憎いといえば、
それほど泣いたのに、
僕の心には
虹がひとつもかからなかったことかな。


「じゃあ、とてもいい恋愛だったんだよ。
 誇れよそんなに人を好きでいられたんだ。
わりぃ、昼から会議あって準備しなくちゃ課長に叱られるから先行くわ。」


誇っていいのか。
フラれたのに。

疑わぬことなく、愛していたことを。

話してみて良かった。

すこし、ほんのすこしだけど、
心の中の
曇天の空に日がすこしさした。


ん?


ちょっとまてよ。
なんでフラれたんだっけ?

まぁいいか。


しかし、

その謎は意外に早く知ることとなった。







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第2話 夢であれ 


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